2003. 10. 7(8歳)
作・U坊/リライト・Umiko
我々は、野生動物だ。
人間どもに、これ以上自然を破壊させてはいけない。我々の手に、野生を取り戻すのだ。
人間たちは、進化しすぎて、自分たちだけが特別なものだと思いすぎている。
だけど、ありだって一生懸命生きている。バクテリアだって、らん藻だって、それぞれ一生懸命生きているのだ。
それなのに、人間だけがこんなに進化しているのは、ずるすぎる。
我々は、人間どもを絶滅させることにした。
といっても、全部の人間をということではない。日本人と、日本にいる外国人を絶滅させて、我々が日本を奪って、野生の国を作るのだ。
我々は、いつもそのことを話し合っている。
けれども、人間どもは、そんな我々の計画をまったく知らない。なぜなら、人間どもは、野生語がわからないからだ。
たまに、うさぎが人間のところに行って、
「おい、自然を破壊するのをやめろ」
と言うのだが、人間は、ただ、
「へぇー、めずらしいな、こんなところにうさぎがいるぞ」
と言うだけだ。
人間のところに行ったうさぎは、一匹も帰ってこなかった。
ペットにされたか、皮をはがされ、肉を食べられたか、どっちかだろう。
我々は、人間を絶滅させる会議を開いた。
その会議を「野生会議」と名付けた。
だが、我々には、人間どもが「機械」といっているようなものは、開発されていない。
いや、発明されていないと言った方がいいのだろうか。
とにかく、人間は我々の手には負えない。
だが、いつの日か、我々は人間どもを絶滅させる日が来ると信じている。
しかし、いくら会議をしても、作戦は失敗してばかりいる。
最初に、我々は、木を持ってきて、人間たちが「ヤリ」と呼んでいる武器の形にして戦おうとした。
木を削って、人間にいちばん近いサルが、
「さあ、かかってこい!」
と、襲いかかった。しかし、
「おや、サルが変わった木を持ってるぞ、折っちゃえ」
と、簡単に取り上げられ、折られてしまった。
第二の作戦は、人間たちのような「機械」を作ろうというものだった。そこで、できるかぎりの機械を、人間どもから盗んできた。
だが、どう組み立てればいいのかわからなくて、失敗した。
この他にも、考えられるだけの知恵を集めて、人間を絶滅させる作戦を実行したが、何度やっても、どんなに頑張っても、作戦は失敗する。
そこで、我々は、第二の作戦をもう一度復活させ、機械を組み立てることにした。
今、我々が人間どもから盗んで集めてきた機械がここにある。
たとえば、これは、人間どもが「テレビ」といっているものだ。
これは、人間どもが「クーラー」といっているものだ。
そして、これは、人間どもが「電子辞書」といっているものだ。
これは、人間どもが「ゲームボーイ」といっているものだ。
我々には、どこをどう使えばいいのかまったくわからない。
そこで、「テレビ」のスイッチを入れてみた。
すると、パチリと音がして、ガンガン音が響いてきて、すごく大きい人間どもが現れた。
我々は、すぐにスイッチを切った。
まだまだ機械はある。
これは、人間どもが「パソコン」といっているものだ。
そして、これは「計算機」といっているものだ。
だが、どうも人間を絶滅させるのに使えそうもなかった。
しかし、中には役に立ちそうなものもあった。
たとえば、これ。
人間どもが「てっぽう」といっているものだ。
似たようなものがまだある。
これは、人間どもが「ピストル」とかいっているものだ。
これらを合体して、「てっぽうピストル」というものを作った。そのままだが。
我々は、人間どもを撃ちまくり、ついに町中の人を殺した。
それから、人間どもが使っていた「車」とかいうものに乗って、運転できるか確かめてみた。
「車」は動いた。
そこで、日本一周をして、交通事故を起こしまくり、いっぱい人間を殺した。
そして、ついに、日本を征服することに成功した。
我々は、日本を野生に戻した。
けれども、人間のいなくなった日本は、シーンとして寂しかった。
我々は退屈してきた。
「征服なんてするんじゃなかった」
少しだけ後悔した。
結局、我々は「車」も「てっぽうピストル」も捨てなかった。
一度使えるようになったものを手放すのはもったいなかったからだ。
野は、我々のものである。
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